あらゆる性能が底上げされた ブラシレスモーター / トレポン へ導入するメリットとは?
2024年1月、オルガエアソフトで販売を開始したS.COM REBORN ブラシレスモーター 。メーカー発表時から当店でも期待を寄せていたこの製品は、2023年からスタッフが自前の トレポン に組み込んで実際にサバゲーでもテスト運用を重ねており、長年のカスタム実績を持つエンジニアから見ても自信をもってオススメできる逸品として取り扱いを決定した新次元モーターである。
ありがたいことにORGAでの取り扱い決定から多くのトレポンオーナーに注目いただき、あっという間に在庫が僅かとなるほどの反響だがそれもそのはずである。REBORN ブラシレスモーター には、トレポン の特性を熟知しているベテランオーナーからずれば、正に理想的なモーターだからである。
だが、 ブラシレスモーター と言っても従来モーターとの違いは一体何なのだろうか。SYSTEMA PTWの従来ギアボックスにポン付けで交換可能なモーターではあるが、回転数やトルクがアップしているにもかかわらず省エネや低振動・静音まで実現しているのは何故なのか。
そこでブラシレスモーターの仕組みや特長の解説と併せ、トレポンに組み込むことで得られるメリットについて詳しく解説していこう。
目次
ブラシレスモーター の仕組みと従来モーターとの違い
ブラシレスモーター を トレポン に導入するメリット
トリガーレスポンスが速くなる
流速カスタムに最適なトルク
低振動・静音
メンテナンスフリー
高効率で省エネ、発熱も少ない
組み込み精度の高いREBORN ブラシレスモーター
トレポン で ブラシレスモーター の性能を活かすコツ
バッテリー性能のキープ
本体の調整
フルオートの使用は要注意
ORGAでの販売・サポート体制について
ブラシレスモーター の仕組みと従来モーターとの違い
そもそも、 ブラシレスモーター とは何なのか。
トレポンや電動ガンで使われる一般的なモーターは「ブラシ付きDCモーター」という構造で、シャフト(回転軸)と一体化したローターにコイルが設置され、ケースに固定されるステーターには永久磁石が用いられる。回転運動を行うローターにはコミュテータという接点が存在し、ケース側の接点=ブラシを通してコイルに電流が送られる仕組みである。ローターの回転に合わせて接点が物理的に切り替わるため、通電によって磁力が発生したコイルが、順番に永久磁石の吸着力と反発力を受けて回転を生む仕組みとなっている。これは、小学校の理科でも習う最も基本的なモーターの仕組みそのものである。
それに対し、ブラシレスモーター はその名称の通り「ブラシレス=接点がない」モーターである。
ブラシレスモーター ではブラシ付きモーターとは逆にローター(回転側)に永久磁石が設置され、ステーター(固定側)にコイルが設置される。ローターの回転がセンサーで検出され、CPUによってコイルに流れる電流がコントロールされるため、ローターとステーターの間に電気的な接点が不要なのが特長だ。接点がないことによるメリットは以下の通り。
①摩擦による接点の消耗がなくブラシやコミュテータのクリーニング・交換等のメンテナスが不要。
②接点の劣化による性能低下がなく、安定した回転を得やすい。
③接点で発生する(スパーク)火花放電がなく、電気的なノイズやロスが少ない。
※ローターやステーターの個数はモーターの設計により異なります。
そのほか、従来モーターとブラシレスモーターの比較を表にまとめてみた。
比較項目 | 従来モーター | ブラシレスモーター |
---|---|---|
制御方法 | 電気接点:ブラシとコミュテータ | CPU回路 |
ローター(回転側) | コイル | 永久磁石 |
ステーター(固定側) | 永久磁石 | コイル |
パワー | 接点溶断防止のため電流に制限あり | 接点不要のため大電流を投入しやすい |
パワーロス | 発熱による永久磁石の磁力低下が起きる | 発熱が少なく永久磁石の磁力低下が起きにくい |
振動 | 大きい ローター径が大きい |
小さい ローター径が小さい |
作動音 | 大きい 接点の摺動音や振動による騒音 |
小さい 接点がなくベアリング性能や設計のみに依存する |
電気的ノイズ | 大きい 接点でスパークが発生するため |
小さい 接点がなく大きな電気ノイズの発生源が少ない |
発熱 | 大きい コイルが内側にあるため熱がこもりやすい |
小さい コイルが外側にあるため放熱・冷却性が高い |
ざっくりとモーターの構造の違いについて書いたが、次項からはトレポン用モーターとしての視点からメリットについて掘り下げてみよう。
ブラシレスモーター を トレポン に導入するメリット
トリガーレスポンスが速くなる
一般的に、工業や家電などで使われるモーターの種類は使いどころによって最適なものが選択されるため、ブラシ付きだから性能が劣る、ブラシレスだから性能が勝る、というシンプルな話ではない。だが、少なくともS.COM REBORNをはじめとしたエアガン用の ブラシレスモーター については回転数・反応速度において従来モーターを凌ぐ性能を持つように設計されている。 ブラシレスモーター はブラシ付きモーターと比べ、同じパワーであれば小型化できるというメリットがあるが、言い換えれば、同じ大きさで作れば ブラシレスモーター の方がより大きなパワーを生み出せるということだ。
実際のところREBORN ブラシレスモーター は11.1V Lipoバッテリーでの運用で、通電から僅か0.005秒で43,000RPMに達するという驚異的な回転数と反応速度を持つ。従来のトレポン用ブラシ付きモーターは10,000RPM程度なのでその差は歴然だ。モーターの回転数はピストンを引くスピードにそのまま影響するため、トリガーを引いてからBB弾が発射されるまでのトリガーレスポンスは当然速くなる。最大回転数までの到達時間も恐ろしく早いことと併せ、REBORN ブラシレスモーター 導入時のセミオートのキレはプリコックに迫るものがある。
流速カスタムに最適なトルク
従来のブラシ付きモーターは電力の強弱によって回転数やトルクが変動するが、それと同時にシャフトに掛かる負荷の影響も受ける。そのため、メインスプリングを強めるほどレスポンスが落ちてしまう。元来トルクの強いモーターであるためそこまで大きな差が出るわけではないが、その僅かな差を体感しているトレポンオーナーも多いことだろう。
それに対し、REBORN ブラシレスモーター は規定の電力があれば一定の回転数をキープするように設計されている。これは ブラシレスモーター 特有のCPUによる回転制御が行われているおかげである。M180相当のスプリングまでは回転数を落とすことなくドライブできるトルクの強さがあるため、実用範囲内のメインスプリングであればトリガーレスポンスが遅くなることはない。
これは強スプリングを用いる流速カスタムに非常に適した性能であることを意味する。
低振動・静音
圧倒的なパワーによって、非常に速いトリガーレスポンスや強スプリングをものともしないトルクを発生させるREBORN ブラシレスモーター だが、実際に稼働させてみると出力スペックに反し振動が少なく静かにドライブすることに驚く。これは ブラシレスモーター の仕組みでも解説した、ローター側に永久磁石が設置されていることが要因である。
従来モーターは複数のコイルが設置されているためローターの直径が大きく振動が発生しやすい。しかし、 ブラシレスモーター は永久磁石を配置してるのでコイルほどのスペースは不要でローターの直径が小さく抑えられ、非常に低振動なのが特長なのだ。
また、 ブラシレスモーター は接点がないため従来モーターのようにブラシとコミュテータがこすれる摺動音や接点切替時のスパークが発生しない。シャフトが触れるのはケースとの間に設置されたベアリングのみのため、回転がスムーズでノイズが少ない点も大きなメリットだ。
実際にトレポンに組み込んで射撃するとグリップから感じる振動はごくわずかで、ピニオンやギアボックスの調整さえしっかりしていれば、ピストンの音のみが際立つ心地よい発射音を奏でる。
メンテナンスフリー
自身でメンテナンスを行うトレポンオーナーを悩ませてきた、グリップ内に溜まる黒い粉塵。この正体は、コミュテーターとの摩擦やスパークによって減っていくブラシの削れカスだ。 ブラシレスモーター は接点が存在しないため、この粉塵が発生しないことも嬉しいポイントである。
また、従来モーターのブラシは消耗品なので定期的に交換が必要となり、放置すれば動作不良も起こすためメンテナンスが欠かせないが、 ブラシレスモーター には当然そのようなメンテナンスは必要ない。せっかくサバゲーに来たのに、予期せずブラシが寿命を迎え愛銃が使えない、なんていう悲しいトラブルともおさらばできる。
高効率で省エネ、発熱も少ない
ブラシレスモーター は従来モーターよりも出力が高いため、その分バッテリー消耗も激しいのでは?と危惧するトレポンユーザーもいるかもしれないが心配は無用だ。むしろ ブラシレスモーター はエネルギー変換効率が良く、一般的なブラシ付きモーターよりも燃費が良いのが特長だ。セミオートをメインで使用している分には、1000mAh以上のバッテリー1本で丸一日サバゲーを楽しむことができるだろう。
REBORN ブラシレスモーター は、内部にArm Cortex M4 100MHzコア高性能CPUや6つのMOSチューブを搭載して回転制御を行っている。そのため電力損失が少ない=効率が良いため、最大トルクを生むのに必要な電流のみを消費するようコントロールされている。
また、 ブラシレスモーター はコイルがケース側に配置されているため、コイルで発生する熱がそのまま放熱されやすい。従来モーターではトレポンを激しく連射するとコイルの熱が内部にこもりやすくグリップも熱くなるが、REBORN ブラシレスモーター ではコイル配置のほか高温対策素材のケースも用いているためグリップの温度上昇は僅かだ。
永久磁石は最適な温度範囲を超えると磁力が低下するという特性があるため、モーターの温度上昇はパワーの減衰を意味する。CPUによる回転制御を行っていない従来モーターではその影響は大きいと言える。
温度が平常に戻れば永久磁石の磁力は戻るものの、サバゲー中のパワー低下を避けたいのは当然だし、過度な高温にさらされたりパワー減衰を繰り返せば永久磁石の磁力は徐々に戻らなくなりモーターの寿命を招くことになる。発熱量の少なさは、モーターの安定した稼働と長寿命化に非常に大きなメリットをもたらすのだ。
なお、REBORN ブラシレスモーター は防磁もしっかりしているため、グリップに工具が引っ付くようなこともなく周囲の電子機器への影響が少ないので安心だ。ただし、内部に強力な永久磁石が用いられていることに変わりはないため、スマートフォンなどは極力近づけないようにしよう。
組み込み精度の高いREBORN ブラシレスモーター
ORGAスタッフは、REBORN ブラシレスモーター を実機に組み込んで実際のサバゲーにも参加するなどテストを繰り返してきているが、まず組み込みの時点でS.COM製品の成型の良さに驚いた。この手のサードパーティー製パーツはガタを恐れるあまり大きめに成型されていることが多く、レシーバーに合わせて加工をするのが常である。
しかし、S.COM REBORNは違った。SYSTEMA製やZ-PartsレシーバーなどKUMIモーターがポン付け可能なレシーバーは勿論のこと、KUMIモーターが付けられるよう加工済みの他メーカーレシーバーであれば加工なしにポン付けで組み込みができたのだ。当たり前のようでいて、これは中々難しいことである。
またREBORN ブラシレスモーター はコミュテータとブラシがない分、ケーブルを接続するエンド回りがすっきりしており組み込みが非常に楽だ。端子の先にはCPUを搭載した基板があるためハンダ付けの際はコテの当てすぎにご注意いただきたいが、配線の取り回しは非常にしやすい。スペースに余裕があるためプラス極配線を通す溝があり、従来モーターの様にサイド逃がした配線がグリップの脱着を邪魔することがない。よく考えられた設計である。
トレポン で ブラシレスモーター の性能を活かすコツ
バッテリー性能のキープ
REBORN ブラシレスモーター は仕様上11.1V Lipoバッテリー(25C以上推奨)で稼働するよう設計されており、7.4Vでは動作しないので注意が必要だ。また、経年劣化や過充電・過放電によりセルが痛んでいるバッテリーでは本来の性能が発揮されず、最悪の場合動作しない場合もある。従来モーターであれば、バッテリーの性能が低下していても無理くり稼働させることは可能だが、REBORN ブラシレスモーター を導入した際は今まで以上にしっかりとしたバッテリー管理が必須となってくるだろう。
せっかく ブラシレスモーター を組み込んだのにイマイチ動作が渋い気がする…といった場合は、お手持ちのバッテリーに寿命がきているのかもしれない。
また、トレポン使用中のバッテリー残量にも気を配りたい。従来モーターの場合、回転数が下がりレスポンスが遅くなることでバッテリー残量が少ないことを察知できるが(そこまで行くと使いすぎではあるが)、REBORN ブラシレスモーター は一定の電力がある限り高回転をキープし続けるためバッテリー残量がわかりにくい。消費電力が少ないため常識的な範疇でトレポンを使用していればサバゲーでも丸一日はもつはずだし保護機能も備えてはいるが、念のため休憩中にバッテリーチェッカーを使用し、50%(目安として1セルあたり3.8V程度)を切っている場合はバッテリーを交換しよう。
本体の調整
REBORN ブラシレスモーター は回転数が非常に高いため、ノズルリターンまでの時間が短くなる。BB弾の給弾が追い付かないと、最悪の場合チャンバーで弾割れを起こしてノズルの変形・破損を引き起こしかねないため、給弾スピードが最速となるようトレポン本体のバランス調整やマガジンのメンテナンスは必須である。
具体的には以下のポイントを中心に確認・調整を行って頂きたいが、ちなみにこれらは従来モーターであっても共通して調整が必要なポイントでもある。
①チャンバーとマガジンリップの位置調整
チャンバーの給弾口とマガジンリップの位置がピッタリと合っていないと、給弾スピードが落ちてBB弾が正しい位置にセットされなくなり、弾道の乱れや弾詰まりの原因となる。特に複数のメーカーの外装パーツを組み合わせている場合は要確認箇所だ。もしズレが見られる場合は、チャンバーの前後位置をシムで調整するようにしよう。
②チャンバーとノズルの相性確認
チャンバーとノズルにはメーカー、モデル、ロットの差により相性があり、チャンバーにノズルがスムースに出入りしないと給弾不良を起こしやすい。異なるメーカーのチャンバーとシリンダーを組み合わせている場合は特に要注意である。本体から外した状態のチャンバーASSYとシリンダーを合体させてみて、ノズルが引っ掛かったりしないかよく確認しよう。
③マガジンスプリング
①と②がキッチリと調整出来ていても、そもそもマガジンの弾上がりに問題があっては元も子もない。リップ周りに変形が見られないか、マガジンスプリングがヘタっていないか、給弾ルートにバリがないか、など弾上がりを阻害する要因がないかよく確認し、最良なマガジンのみを使用するようにしよう。
④ノズルB(胴)の変形やOリングの劣化
過去に弾詰まりや弾割れを起こしたことがあるトレポン本体の場合、念のためシリンダーを分解してノズルB(胴)に変形がないか確認しよう。排気穴付近の変形やピストンヘッドOリングがハマるリブに削れが見られる場合は交換が必要だ。そのままではピストンヘッドOリングがノズルをしっかりと引けず、ノズルの後退時間が短くなって給弾不良を起こしやすくなる。
また、ピストンヘッドOリングが劣化している場合もノズルがすっぽ抜けやすくなり同様の現象が起きやすい。トレポンの使用頻度にもよるが、ピストンヘッドOリングは1年に1回程度は交換するようにしよう。
フルオートの使用は要注意
SYSTEMA PTWは元々、7.4V Lipoバッテリーでの運用を想定して設計された電動ガンである。しかし、今ではトリガーレスポンスを重要視する傾向が強く、11.1Vで運用するのが主流である。
※ご指摘を頂いたため訂正いたします。SYSTEMA PTW 最初期はNi-Cdバッテリーであり、電圧もNi-Cdセルに沿った数値とのことです。現在主流の11.1V Lipoは設計時想定のバッテリーよりも性能が高いためサイクルも早くなっており、調整をしっかりと行う必要がある、という趣旨になります。
11.1V Lipoバッテリーでは設計時の想定よりフルオートのサイクルが上がるため、しっかりとバランス調整ができていないとフルオートで給弾不良や弾詰まりを起こしやすいのが通説である。そのため(そもそもフルオートを必要としない、という理由のオーナー様もいらっしゃるが)基本的にセミオートしか使わないトレポンオーナーも多い。REBORN ブラシレスモーター では更にサイクルが速くなるため、より正確な本体セッティングとマガジンの弾上がり対策(マガジンスプリングを強化するなど)を施すことが重要となってくる。
全てのセッティングを最高の状態に仕上げたとしても、ゲーム中に焦ってマガジンキャッチの掛り不足があったり、劣化したBB弾が混じっていたりと、ちょっとしたことをきっかけにフルオートで弾詰まりしてしまうのは11.1V運用のサガである。フルオートを使用する場合は、指切り射撃を心掛け数発程度のバーストに抑えるようにしよう。
ORGAでの販売・サポート体制について
予約開始時の記事でお伝えした通り、オルガエアソフトではREBORN ブラシレスモーター のメーカーであるS.COMとのパートナーシップ提携を進めており、販売後のサポートも含めて充実したサービスを提供する予定である。
REBORN ブラシレスモーター は先述の通り本体側の調整も必要であるが、自分でやるにはハードルが高いと感じる場合は、組込費用を頂いたうえで調整を含めた交換作業を当店に依頼することも可能だ。ご希望の方はお問い合わせより是非ご連絡頂きたい。
またオルガエアソフトでは今後、ノズルリターンまでの時間を極力伸ばし弾詰まりしにくくするためのパーツも製作・販売する予定である。これらの詳細が固まり次第追って情報を公開するので、OUTLINE読者登録とX(Twitter)フォローをしてお待ちいただきたい。